三峡下り


重慶に暮らしている間に必ず一度は三峡下りに行こうと思っていましたが、2013年国慶節に初めて乗船してきましたので、ここでは三峡下り船乗船記として書いてみたいと思います(ご注意:筆者の怠慢で2014年11月に1年以上前の体験をアップしております。変化の速い中国では現状とは異なる可能性がある点、ご了承ください)。


【船の選定】

三峡下りというと、『大地の子』のラストに近いシーンで、陸一心が実父との思い出作りに乗船した古くて汚い船をどうしても思い浮かべてしまいますが、ここ数年の間に次々と新しい大型船が就航し、今では「クルーズ」という名に相応しい船旅を楽しむことが出来ます。

折角に乗るのですから、多少お値段は張りますが豪華船を選択することをお勧めします。

2014年時点で就航している主な豪華船は、
・ ビクトリア・シリーズ
・ センチュリー・シリーズ
・ プレジデント・シリーズ
の3タイプです。

ビクトリア・○○号、というように、シリーズ名の後ろに船名がつく形となっています。

どれに乗船するか悩みそうな気もしますが、実際にはまず出発日と旅程を決めてしまえば、それに合った豪華船は自ずと絞られてきます。筆者の旅程に合ったのは、センチュリー・パラゴン号(漢字名:世紀神話号)という、2013年に就航したばかりの新造船でした。

<センチュリー・パラゴン号基本データ>

総トン数 : 12,516トン
喫水 : 2.8m
全長 : 141.8m
全幅 : 19.8m
船室数 : 199室
定員 : 408人
乗組員 : 150人
デッキ数 : 7層
船籍 : 中国(重慶)


【航路】

三峡下りはショートコースからロングコースがありますが、筆者は最も一般的なショートコースの重慶〜宜昌で乗りました。

宜昌は重慶と武漢の中間点からやや武漢寄りにあり、重慶市中心部から直線距離で500kmとそれほど遠くはありませんが、船は蛇行する長江を、観光地を巡りながらゆっくりと進みます。




【乗船】

三峡下り船の出発地点で最も一般的なのは、重慶市渝中区の半島の先端、朝天門です。

埠頭は可也広いので、事前に何番埠頭の出発かを確認しておく必要があります。尚、現時点では公共交通機関はやや不便な為、お荷物のある方はタクシーで行かれることをお勧めします。

埠頭に降りていくところで、係員による名簿チェックがあります(右上写真)。

これは乗船のチェックというよりも、写真の通り階段を下りて船までかなり歩かないとなりませんので、間違えて違う船に乗ってしまわないように、ということなのかもしれません。

乗船したら、まずはフロントデスク(左写真)でチェックインを行います。

このあたりの手続きはホテルのチェックインと概ね同じですが、如何せん船ですのでカウンターは小さいことから、出来れば少し早めに乗船し、余裕を持ってチェックインしたいところです。

チェックインすると、右写真ようような部屋番号を書いた首から下げるボーディングパスを渡されます。
乗船中はこのボーディングパスがホテルのカードキーのような位置づけとなります。


【出航〜乗船1日目】

いよいよ出航です。筆者が乗船した船の出航時間は21:30でした。

夜発の場合、最大の見所は船から見る山城重慶の夜景です。
左右何れも堪能出来るよう、出航時は屋上デッキに出るのがお勧めです。

出航から30分程度、中心部を離れ大仏大橋の下を通過すると、あとはそれほど景色の良い場所は無く、真っ暗な中、長江を下っていくことになります。

尚、夜に出発する船に乗船される場合、乗船日の夕食は付いていないことが多いので、事前に食事を済ませてから乗船するか、夕食を持ち込む必要があるので注意が必要です。

筆者は早めに乗船したかったので事前に食事を買って持ち込みました。

豪華船であれば、チェックイン時間が終了したところで、航程と船内イベントなどの説明会が開催されますので、時間と場所を確りと確認しておきましょう。船内は思ったより広いので、初日のうちにどこに何があるかを把握しておくと良いかと思います。


【乗船2日目】

筆者が乗船した船では、毎朝、太極拳教室を屋上デッキでやっているということだったので、朝から屋上に出てみました。

すぐ隣を、同じような三峡下りの客船が並走しています。

携帯のマップで見ると、重慶市中心部から直線距離で100kmほど下った、豊都という町のようです。

携帯といえば、船内には有料でWiFiが使えるとなっていたのですが、係員に聞いたところ、田舎の渓谷を走るところも多く、そうするとそもそも船が電波そのものを受信しない為、結局WiFiも繋がらないから、やめた方が良いですよ、と言われました。

商売下手なのか、それとも過去に有料なのに繋がらないというクレームが殺到したことからの対応なのか。。。

この日の午前中はオプショナル・ツアーの豊都鬼城があり、参加してみました。
(オプション料金260元、旅行協議書への署名を求められました)

ツアーは前日夜までに申し込みとなっていましたので、乗船の際、翌日ツアーの申し込み期限には注意して下さい。

豊都鬼城の詳細はこちらへ(クリックするとリンク先へ飛びます)。

フロントの隣にあるカウンターで部屋番号のカードを受け取ります(右上写真)。
その後、レストランでツアーの組み分けが発表されて、ガイドさんに従って下船、観光することになります(今後も下船ツアーは概ね同じ形式。但し船代に含まれているツアーと有料のツアーがあるので注意が必要)。

ところで殆どの三峡下り船は同じ観光地に停泊しますので、船着き場は時間帯によっては船のラッシュが発生します。

ところが船着き場はそれほど大きくありませんので、どうやって停泊するかというと、右写真ように船着き場に停泊している船にどんどん横付けしていきます。
これでどうやって乗下船するのか、というと、乗客は横付けして停泊している他の船の中を通っていくことになります。

筆者の三峡下りでは、2隻の船を横切って乗下船したこともありました。
逆に乗っている船が通路化してしまうこともありますが、そうなるとメイン・デッキは行きかう他船の乗客でごった返すことになります。

午後は最初から組み込まれている石宝寨観光です。
石宝寨の詳細はこちらへ(クリックするとリンク先に飛びます)。

尚、これ以外にも船内では多くのイベントが開催されていますので、観光で下船しない方は、こうしたイベントに参加して時間を過ごします。

09:00〜 針灸講座
10:00〜 中国結び講座
11:00〜 ガラス小瓶内絵実演
11:30〜 真珠知識講座
13:30〜 映画上映

夜はウェルカムパーティーと船員によるショーが開催されました。
船員なので素人芸かと思いきや、結構真剣にやっていました。

船上はやることが無いので、意外に練習をしっかり積んでいるのかもしれません。







【乗船3日目】

この日は三峡下りメインイベント2連発、午前中は白帝城見学、その後は三峡下りのクライマックス、瞿塘峡と巫峡通過です。

白帝城の詳細はこちらへ(クリックするとリンク先に飛びます)。
白帝城は、三峡ダムによりすっかり景観が一変してしまったそうですが、それでも三国志好きの方には外せない場所だと思います。

次は三峡下り中の三峡下り、です。

何と言っても見晴らしが良いのは上の方のデッキの一番前で人気があるので、写真などを撮りたい方はお早めに場所を確保されると良いかもしれません。

先ずは瞿塘峡8kmです。白帝城から見えた10元札の裏側の模様のところを通過して行きます。


続いて巫峡45kmを通過していきます。


続いて、小型船(右写真)に乗換えて神農渓クルーズへと向かいます。

小型船で1時間ほどで到着、ここで更に小さなカヌーのような船に乗り換えて、細い渓谷の奥へと入っていきます。

途中では昔、三峡ダムが出来る前に川の流れが速かったころの再現として、船頭が陸に上がって舟を引っ張るパフォーマンスも披露してくれます(写真を載せようかと思いましたが、引っ張るロープが細すぎて何だか判らない写真になりそうなので割愛します)。


いよいよ明日は最終日ということで、夕方には下船説明会、夜にはフェアウェルディナーが開催されました。
然し前の晩がウェルカムパーティーだったのでちょっと違和感が無くもありません。


【乗船4日目(最終日)】

4日目、と書き出しますが、厳密には3日目の深夜です。
三峡ダムを船が真夜中に通過するということで、眠らずにデッキで待ち構えていました。

船がシップロックに入るとゲートが閉まり、水が抜かれ、反対側のゲートが開く、これを5階繰り返して三峡ダムを通過していきます。
水が抜かれて船が下がっていく様子を定点カメラで撮影してみました。実際には船が下がっているのですが、壁が伸びているかのような錯覚に陥ります(どこかの遊園地のアトラクションの説明みたいですが)。


三峡ダム通過を堪能した後、やや遅い眠りにつき、朝食を食べると最後の上陸観光、三峡ダム上陸見学です。

船を降りてバスで20分ほど走り、先ずは簡単な展示館の前で説明を受け、その後、長いエスカレーターを乗り継いで丘の上に出ます。

すると眼下に巨大なダムが現れます(右写真)。よくよく見ると、深夜に通過した船の階段でした。

更に下っていくとダムそれ自体の登場です。
兎に角、デカいの一言に尽きます。

日本人が想像するダムというのは渓谷を堰き止めている形だと思いますが、三峡ダムはあの長江を堰き止めているので、規模も形も全く異なり、ダムというよりは超巨大な堰と言った方が良い印象です。

あまりに巨大すぎて、軽い霞が掛かっているだけで向こう側の端が見えません。

万里の長城以来の巨大人工物だと聞いたことがありますが、確かにそうであろうと思わせる圧倒的な巨大さでした。

三峡ダム見学も終わって、最後の渓谷である西陵峡66kmを通過します。
写真を載せても良いのですが、昨日の渓谷と似たような写真になってしまうのでやめておきます。

そして12時、いよいよ下船の時間です。

宜昌港という港に着く、と聞いていたのですが、ついてみるとそこは埠頭でも何でもない、ただの広場でした。
タクシーはおろか、中国で最もメジャーな公共交通機関であるバスも無し、小銭稼ぎの近所の人と思われる白タクに乗る以外、選択肢はありませんでした。この辺りは中国らしい観光です。

ここから先は、武漢へ向かう人、重慶へ戻る人、其々のようです。
筆者は電車に乗り継いで湖北省を観光しながら重慶に戻りました。


【船内のご紹介】

筆者が乗船したセンチュリー・パラゴン号(中国語名:世紀神話号)の船内をご紹介します。
船は7層構造となっていますので、上の階からサン・デッキ(屋上)、オブザベーション・デッキ(5F)、ブリッジ・デッキ(4F)、プロムナード・デッキ(3F)、アッパー・デッキ(2F)、メイン・デッキ(1F)、ボトム・デッキ(地下)、の順に紹介していきます。






前方が屋上デッキ、中心部分には屋根のある休憩スペース、後方はエグゼクティブ・スイート客室となっています。客室エリア手前には小さなジムや図書室が備えられています。











前方はレストラン・サロン、後方はエグゼクティブ・スイートとなっています。最前方には少し小さめのデッキがあり、景色を見るにはここがお勧めです。サロン内にはバーも備えられています。







前方にブリッジがあり、それ以外はデラックス・キャビンとジュニア・スイートの客室エリアとなっています。筆者はジュニア・スイートに乗りましたが、部屋はデラックス・キャビンと略同様も、ベランダがスイート並だったので眺めは快適でした。









前方に、この船で最も高いプレジデント・スイートが2室あります。プレジデント・スイートには専用の前方デッキもついています。それ以外はデラックス・キャビンとジュニア・スイートの客室エリアです。







前方はデラックス・キャビンの客室エリア、後方はレストランエリアとなっています。大半の食事はこのレストランで取ることになります。フロントデスクもこのフロアにあります。






若干客室がありますが、大半は船の運航の為の施設が中心です。低い場所の船着き場での上下船はこのフロアから行うことになります。小さな美容室もあります。






前方には映画館、中ほどはプール、後方はマッサージルームとなっています。が、筆者は見学しただけで、残念乍ら何れも利用はしませんでした。



(2014年11月)