大仏寺・洋人街


【武隆について】


武隆県は、重慶市中心部から南東約170km、車若しくは鉄道で約3時間程度のところにあります。

かつては単なる地方都市でしたが、2007年6月17日、ニュージーランドのクライストチャーチで開催された第31回世界遺産大会において世界自然遺産に登録されたことから、一躍有名となりました。

尚、厳密には、世界自然遺産として登録されているのは「武隆」ではなく「中国南方カルスト」という総面積380kuの非常に広大なエリアです。

然し一般的な観光としては、武隆県中心部の北にある「天坑三橋」「龍水峡地縫」「仙女国家森林公園」、及び県中心部東にある「芙蓉洞」「芙蓉江」と、何れも武隆県中心部から1時間以内の場所にあります。


【武隆の歩き方】

武隆観光をする場合、重慶市中心部から車をチャーターしてしまうのが一番のお薦めです。

武隆は非常に小さな地方都市なので鉄道駅も左写真のような地方駅であり、駅前にタクシーが居ることはあまり期待出来ないこと、また路線バスも1路線のみが駅まで来ていますが観光に使える状況には無いことから、余程時間に余裕が無い限り、鉄道+バスでの移動は避けた方が良いと思います。

また武隆の主要観光地は武隆県中心部の北と東に分かれていること、各観光地は高低差が大きく、幾つかの場所ではカルスト台地の上で下車し、カルスト台地を歩いて下ったところで車に再乗車する、という形の観光となることからも、車をチャーターした方が効率的且つ身体への負担も少なく観光が出来ます。

尚、左下写真の観光センターから右下写真の観光専用大型バスも走っていますので、車をチャーターされない場合は、先ず観光センターまで行き、そこを軸にしてこの大型バスで観光地を回ることになります。


私は重慶から武隆まで列車で移動し、武隆で車をチャーターしました。
鉄道の場合、往路は重慶始発の列車が多いので比較的席が取り易いのですが、復路は長距離列車の途中駅となる為、当日券を手に入れるのは可也難しく、鉄道での移動を予定されている場合、武隆発チケットは遅くとも2〜3日前には入手されておくことをお薦めします。また長距離列車の為、通路には無座の乗客が溢れています。


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鉄道は川に沿って進み、重慶発武隆行の場合、前半は進行方向左手、後半は進行方向右手が川沿いの景色を見ることが出来ます。
列車が武隆に近づいてきますと、左写真のように壮大なカルス大地の山々が進行方向右手に見えてきますので、鉄道で訪問される場合は是非、車窓からの景色にも注意して頂ければと思います。


私は1泊2日で武隆を訪れましたので、「天坑三橋」「龍水峡地縫」「芙蓉洞」の3箇所を訪れました。以下に概要を記載します。
尚、主な見所は海抜1000m前後にあり、夏でも夜は少し冷えることから、軽く羽織る衣類を持っていかれることをお薦めします。


【天坑三橋】

天坑三橋はその名の通り、カルスト大地に架かる天龍橋・青龍橋・黒龍橋の3つのアーチ型地形と、その橋の間にある天龍天坑・神鷹天坑という2つの天坑から成っています。

中国語の「天坑」とは、敢えて日本語に訳せば「天(神)が空けた穴」という程度の意味だと思いますが、実際にカルスト台地に空いた巨大な穴を目の当たりにすると、まさしく神が悪戯をして地面に大きな穴を空けたかのような存在感があります。

通常はカルスト台地の上にある右写真の入口から入ってエレベーターで最初のアーチである天龍橋の上部まで降り、3つの橋を潜り抜けながら、橋と天坑を順番に見ていくことになります。大人の足で普通に歩いて約2時間程度です。
車をチャーターした場合は、この入口ではなく、下まで降りた出口の駐車場で待ち合わせるようにすると便利です。

主な見どころの写真を以下に掲載します。

入口からカルスト台地の中に降りていくエレベーターです。
世界自然遺産の中にエレベーターを設置してしまうというのが如何にも中国ですが、このお陰で階段を下りる距離が短縮されているので余り文句も言えません。
エレベーターからは外が見えるようになっていますが、既に傷や汚れが多く綺麗ではないので、余り期待はしないで下さい。
エレベーターを降りたところから天龍橋のアーチの下を見下ろした所です。
広角レンズを使っているのですが、余りにも大きすぎてこの角度からでは天龍橋の全体は撮影出来ませんでした。
ここから延々と階段を下りて行くことになります。
天龍橋のアーチの様子です。
天龍橋は橋高235m、橋厚150m、橋幅147m、と非常に大きな橋です。
実際に中に入ってみると、可也の大きさを感じます。
天龍橋の上部を下から見上げて撮影したものです。
きっといつかは崩れてくるのだと思いますので、なかなかの大迫力ではありつつも、「今は崩れませんように」と祈りたくなります。
天龍橋のアーチを抜けると更に下へと続く長い階段が見えてきます。
下に見えるのは「天福官駅」といい、張芸謀監督の映画「満城尽帯黄金甲」(日本語名「王妃の紋章」、英語名「Curse of the Golden Flower」)唯一の屋外ロケ地となった場所です。
「天福官駅」から天龍橋を見上げた府警です。
「天福官駅」は唐の武徳2年(西暦619年)にこの地に駅(当時の郵便局兼軍事兵站のような場所)があったことから、2005年に再建されたものです。
一番下まで降り切ったところから天龍橋を見上げてみました。
入口からここまで高低差は300m以上あります。
非常に大きい天龍橋と、豆粒のような人が見え、ここを下ってきたのだと思うと感慨深いものがあります。
天龍橋と、次の青龍橋の間にある「天龍天坑」というドリーネ(石灰大地が侵食されて出来た窪地)です。
奥に見えるのが青龍橋です。
天龍天坑は十字型をしており、直径522m、面積19万u、最大深度は276mあります。
青龍橋と次の黒龍橋の間にある「神鷹天坑」というドリーネです。
青龍橋は、橋高281m、橋厚168m、橋幅124mと、高さと厚みは世界一とのこと。橋の名前は、雨上がりに滝の水が霧になって常に虹が出て、橋が虹に映ると天に飛び立つ龍のように見えるからだそうです。
また神鷹天坑は、口の字型をしたドリーネで、最大直径300m、面積は5万u、最大深度は285mあります。
黒龍橋です。
橋高223m、橋厚107m、橋幅193mあります。
この橋は下の部分が狭く薄暗いことに加え、中には一匹の黒龍が旋回しているかのように見える模様があるので、この名前が付いたそうです。
黒龍橋を抜ける緑が増え、小川沿いに美しい自然が広がっています。
周辺の斜面からは水も湧き出し、カルスト台地の急斜面の厳しい自然と、水と緑豊かな自然とが絶妙に混ざり合って美しい風景を作り出しています。
いよいよ天坑三橋も最後です。
1人10元でここからはゴルフカート車のような車で出口に運んでくれます。
体力がある方は、写真中ほどに小さく見える山道を更に徒歩で登って行きます。
ご参考まで、天坑三橋の全体図です。
平面図なので判り難いですが、実際には前半はひたすら階段を下り続けますので、実際の距離よりも遠く感じます。



【龍水峡地縫】

龍水峡地縫は仙女山麓を流れる洋水河渓谷にあり、カルスト台地が大きく裂け、最も高いところで高低差が400mもあります。

入口を入ると最初に細い洞窟を抜け、ここでもエレベーターで80mほど下に降ります。その後、崖沿いの桟道を進み、洞窟の入口を覗いた後、今度は下へ下へと川沿いに進んでいくことになります。

天坑三橋同様に、車をチャーターした場合は川を下った出口の駐車場で待って貰うのが効率の良い見学ルートです。

龍水峡地縫の主な見どころは以下の通りです。

入口を過ぎたところで地上からも判る大きな地面の裂け目が見えてきます。
絶壁には緑が生い茂り、上からは谷底は全く伺い知ることが出来ません。
洞窟を抜け、エレベーターに乗って地面の裂け目の下に降りると雄大な景色が広がっています。
然し天坑三橋同様、世界自然遺産の中にエレベーターを作ってしまう点は、中国だなと感じます。
エレベーターを降りた場所から、切り立った地面の裂け目の斜面に縫うように設けられた桟道を進んでいきます。
最初のうちは単なる山道のような風景ですが、徐々に桟道の上にも岩がせり出すなど、厳しい自然の風景となっていきます。
桟道を暫く進むと、その先には非常に大きな洞窟が待ち受けています。
大地に大きくぽっかりと口を開けた洞窟には、美しさを通り過ぎて恐怖すら感じます。
洞窟の中に入ると随所から水が滴り落ちて涼しさを感じます。
外とは打って変わって、壁面には苔などの緑が見て取れます。
洞窟から少し入ったところには写真のような展望台のようになっている場所があります。
洞窟は少し入るとその先は通行止めになっています。
最深部から入口の方向を振り返ると、入口から差し込む光が幻想的な風景を作り出していました。
真ん中に見える部分が上写真の展望台のような場所です。
さらに洞窟の入口まで戻ってふと今まで進んできた道を振り返ってみると、なんと物すごい断崖絶壁の桟道を進んできたのだということが判ります。
この風景を先に見てしまったら、もしかすると降りて来られなかったかもしれません。
今度は谷底へと川沿いにひたすら下って行きます。
可也急な斜面の階段を延々と続きます。
川沿いの桟道を暫く進んでから後ろを振り返ると、今まで下ってきた道が洞窟の壁沿いに張り付くように、縫うように架けられている様子が見えます。
これも先に見ていたら降りられなかったかもしれません。
更に進むと川沿いの緑の道が進みます。
ここでも振り返ってみると、地面の大きな裂け目がとてもよく見えます。
中国語ではこの風景を「一線天」、つまり天が一本の線のように見える景色だと表現するそうです。
カルスト台地の上から豪快な水が滴り落ちる滝が目の前に現れます。
高さは約80m、私たちが訪れた際には非常に水量が多く、勢いがありました。
滝の裏側が桟道になっており、滝を裏から眺めることが出来ます。
水しぶきが物すごいので、カメラのレンズが水霧ですぐに曇ってしまいました。
その先は谷底の細い川に沿って、まさに地面の裂け目という感じの桟道を進みます。
アップダウンは無くなり、徐々に平坦になっていきますが、ところどころの道幅は非常に狭く、自然の脅威に驚かされます。
いよいよゴール間近です。
徐々に川幅が広がって行きます。この先に駐車場があります。



【芙蓉洞】


芙蓉洞は武隆県中心部から東に車で30分ほど進んだ山の上にあります。

現在はすぐ下がダム湖となっており、ダム湖沿いの道の先に駐車場がありますが、余り大きく無いため、観光シーズンの週末の場合、車は川沿いの臨時駐車場に停めさせられて、そこからはバスで洞窟入口へ向かうことになります。

この周辺には他にも多数の鍾乳洞がありますが、公開されている芙蓉洞は全長2700m、うち遊歩道が設置されていて見学可能な長さは1900mあります。
日本最大規模の山口県秋芳洞の観光遊歩道が約1kmですので、倍近い規模あることになります。

見学には大人の足で1時間半程度かかりますが、アップダウンが多いので、少し余裕を持った見学時間の設定をお薦めします。

以下に主なスポットの写真を掲載します。

洞窟の前に広がるダム湖です。
非常に雄大な景色で、洞窟に入る前から景色に見とれてしまいます。
然しこの斜面を切り開いて作られた車道を観光大型バスが行きかっている風景には、やや恐怖も感じます。
芙蓉洞は標高500mとそれほど高く無いので夏は暑いのですが、洞窟に入ると急速に気温が下がります。
入口を入ると目の前には中国らしくライトアップされた極彩色の世界が繰り広げられています。
(このHPの写真は感度の良いカメラで撮影した為、肉眼よりもやや派手に色が出てしまっていますが)
メインの一つ、高さ21m、幅16mの巨大石柱「巨幕飛滝」です。
左側の高台で業者が記念撮影してくれます。普通、私はこういうのはやらないのですが、小さい写真は無料だからという口車に載せられて撮影してしまい、出来上がりをみたらなかなか素晴らしかったのでつい購入してしまいました。
尚、出来あがった写真は洞窟の出口近くにあります。
更に奥に進むと非常に大きなホールのような場所がありました。
高さは50m近くあり、実際に中に進むとその大きさに驚かされます。
見所の一つ、珊瑚揺池です。
水の中に沈む鍾乳石があたかも珊瑚のように見え、観光案内などでは最大の見所の一つとして紹介されていますが、中国の方には余り人気はありませんでした。小さくて地味だからか、それとも重慶の方々は海を見たことが無い人も多いので、珊瑚に似ていると言われてもピンとこないのかもしれません。
おまけ写真です。
芙蓉洞の入口近くに、「芙蓉江速滑」というダム湖をワイヤから吊られた椅子で滑る遊びがありました。
1人50元ということなのでやってみました(写真に写っている赤いシャツは私です・・・・)。
尚、ダム湖をこの滑車で往復するのですが、当然到着する場所は山の下なので、最後は長い階段を歩いて戻って来なければなりません。



(2012年7月)