大仏寺・洋人街


【珊瑚覇】


重慶市の中心部を流れる長江は、上流域だけあって、頻繁に渇水と増水を繰り返しています。

中心部にある渝中区と南岸区を結ぶ長江大橋を通過されたことのある方は、渇水期には大きな緑茂る中洲が出現することをご存じかと思います。これが「珊瑚覇(正確には土ヘン)」と呼ばれている場所です。

元々、この珊瑚覇は重慶の空港でした。

重慶で最初に出来た空港は、国民革命軍21軍が建設した太陽覇空港でしたが、市街地から余りにも遠すぎた為、重慶⇔成都間の定期便を就航させることになった1933年、珊瑚覇を空港とすることを決定しました。工期は僅か50日だったそうです。

当時の珊瑚覇空港は、長さ750m、幅46mという非常に小さなものでした。

右写真は北側の河原から珊瑚覇を撮影したものですが、何となく現在でも空港の面影が無くもありません。

珊瑚覇の西側には左写真のように、滑走路面の一部だったのではないかと思われる残骸も見ることが出来ます。

珊瑚覇空港は、その後、重慶の玄関口として活用されることとなります。

記録に残っているところでは、1940年7月に周恩来元総理(当時は共産党代表として重慶に駐在)が珊瑚覇空港で撮影した写真が残っていますが、当時の空港建物は即席の非常に簡単なものであったことが判ります(中国語で「珊瑚覇机場、周恩来」と検索されれば、当時の写真はすぐに見つかるものと思います)。

また1944年には上海から成都へ戻る途中の米軍B-29が燃料不足で珊瑚覇空港に緊急着陸したとの記録も残っています。

その後も珊瑚覇空港は重慶の重要な交通の窓口として使用されましたが、1950年の長江大増水で完全に水没した為、その後は白市駅空港が重慶の空の玄関となり、珊瑚覇の空港としての役割は完了することになります。

1980年代からは遊び場所として徐々に整備され、現在では何と乗馬場まで出来ています。

筆者が訪れた日は天気も良好でしたので、多くの家族連れが珊瑚覇に来て、釣りやバーベキューを楽しんでいました。

左写真は珊瑚覇の最東端部分から長江を撮影したものです。
長江の真ん中に立っていることが良く判ります。

現在の珊瑚覇は、渇水期には東西に長さ約2km、南北に幅約0.6kmという、非常に大きな中洲として、重慶市民に遊びの場を与えています。


【珊瑚覇の歩き方】

珊瑚覇は渇水期のみ徒歩で渡ることが可能ですが、長江の水は上流で降った大雨が数日を経て重慶の増水に繋がる為、渇水期で重慶では雨が降っていなくとも、いつ水量が増加するか判りませんので、くれぐれも珊瑚覇へ渡られる際にはご注意をお願いします。

珊瑚覇へは菜園覇大橋近くと、長江大橋近くから降りることが出来ます。

<菜園覇大橋からのルート>

菜園覇にある重慶駅・長距離バスターミナルから更に南の長江沿いに、主に重慶市内行き長距離バスターミナルがあります。

このバスターミナル前を通り過ぎて西へ向かうと金物市場がありますので、金物市場の中へと入ります。

金物市場の一番奥から一本手前の道で右折すると、左上写真のような下り坂に出ます。

この坂を下っていくと、やがて左手に木材や竹材を積んでいる場所に出ますので、そこで左折すれば、右写真のような未舗装の下り坂になります。

この道を降りていけば長江の河原に出ることが出来ます。

このルートは木材や竹材の陸揚げに使われているようですので、比較的安定して使える道だと思いますが、道は非常に判りにくいのと、可也ローカルなところを通ります。

<長江大橋からのルート>

長江大橋の北側にある長江浜江路を、長江大橋から東方向に進むと、道路沿いに「漁人碼頭」というレストランの小さな看板が出てきます。

その看板のところで階段を下りると、長江沿いの遊歩道があり、そこから2か所ほど長江に降りることが出来ます。

左写真は「漁人碼頭」の目の前の降り口です。

このルートは長江との行き来は判り易いのですが、そもそも長江浜江路の交通のアクセスが非常に悪い為、タクシーで行かれるか、バス停からは可也歩く必要があります。

「漁人碼頭」から東側に500mほど行った場所には車も降りられる坂道があり、車で河原に遊びに来られている方はそこから降りて河原に車を停めていました。

尚、冒頭にも書きましたが、川の水はいつ増水するか判りません。

川沿いには右のような注意看板(川の水は無情、生命は貴重、遊泳や水遊びは危険)も出ていましたので、くれぐれも河原に降りられる際はご注意をお願いします。


(2013年4月)