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嘉陽小火車・芭石鉄路


【六枝長角苗族梭戛村】

貴州省には各地に少数民族村がありますが、今回は省都貴陽から西にある黄果樹滝観光と併せて行ける場所ということで、貴陽から西側のエリアにある少数民族村を探したところ、かつて日本のテレビでも紹介され、多くの方が旅行記も書かれている「長角苗族村」を訪れてみることにしました。

長角苗族は苗族の一派ですが、長い髪を角のように結いつける特徴的な文化を有していることで有名です。
貴州省六枝特区を中心に数千人が十数の部落に分かれて居住していますが、今回はその中でも最も大きい部落である、六枝長角苗族梭戛村を訪れることにしました。

私たちは黄果樹滝に前泊しましたので約2.5時間ほどで到着しましたが、貴陽から行く場合は高速道路を約1.5〜2時間走って安順インターで降り、その後県道(といっても殆ど山道)を約1時間、更に六枝村の中心部から山道を1時間、合計車で約4時間程度掛かります。

可也の長時間山道ドライブではありますが、途中では素晴らしいカルスト台地の風景を楽しむことが出来ます。

また六枝特区周辺はまだまだ古くからの生活が残っており、牛に鍬を引かせて田畑を耕す様子や、馬の背に荷物を括り付けて運搬する様子などを非常に多く目にすることが出来ます。

然し、長時間ドライブを終えて辿り着いた六枝長角苗族梭戛村は、既に大幅な開発が行われており、かつて多くの方が旅行記で書かれていた様子は完全に失われてしまっていました。

村の入口には綺麗に整備された道路と、立派な門がそびえていました。

門には、「中国貴州 六枝梭戛生態博物館」の文字が刻まれており、更にその隣には2004年に建てられた「貴州省 愛国主義教育基地」の石碑が建っていました。

「生態博物館」とは、その名前の通り、現在生きている状態をそのまま保存するということで、比較的新しい博物学の概念だそうです。

この段階で非常に嫌な予感がしたのですが、大変残念なことにその予感は的中してしまいました。

村の入口を抜けると 、綺麗に舗装された村道が待ち構えていました。

村の中に建てられていた記念碑によれば、「村級公益事業建設一事一議財政奨補」として、総投資14.37万元(うち財政奨補資金5.37万元)を掛け、総延長1348mの村道舗装工事が2012年8月に完成した旨が書かれていました。

舗装された村道の先には、この数年の間に建てられたであろう、新築の2階建・3階建の建物が立ち並んでいました。

村の奥の方はまだ古い建築が残っているのではないかと思い、村道を進みましたが、舗装された綺麗な道が続くばかりで、その両脇には現在建築中の建物があるのみでした。

更には、村の至る所に太陽光パネルのついた真新しい街灯が多数設置されていました。

確かに電気が恐らく通っていないであろう村では、太陽光パネルを利用した電燈は大変に有効だとは思いますが、もはや村の景観はかつての面影の欠片も見ることが出来ませんでした。

唯一、紀念的に古い家屋が残されていたのが左写真です。

恐らく数年前までは、このような味わい深い木造の家屋が舗装されていない土の村道の両脇に、当たり前のように立ち並んで居たのであろうと思いますが、現在では寧ろそうした建物の方が珍しい遺跡であるかのように扱われていました。

何故このようなことになってしまったのか、その謎は、村の奥にある、これまた新築の古い集落を模した博物館(右下写真)で明らかになりました。

博物館にあった展示パネル等の説明によれば、以下経緯で設立されたようです。

<1995年>
貴州省政府が貴州省に残る貴重な少数民族の生態保護を目的に、生態博物学の権威であったノルウェー人学者、John Gjestrum氏等に調査研究を依頼、同氏等が作成した『在貴州梭戛村建立中国第一座梭嗄生態博物館的可行性研究報告(邦訳:貴州省梭戛村における中国初の梭嗄生態博物館設置に関するフィジビリティ・スタディ・レポート)』が文化遺産保護を進めたい中央政府に認められる。

<1997年>
中国・ノルウェー両政府間で本件を含む文化協力の協定を締結、John Gjestrumをアドバイザーとするプロジェクトが開始され、同年、中国初の生態博物館が六枝長角苗族梭戛村に完成。

博物館の前には、John Gjestrum氏を称える紀念プレートと、中国ノルウェー友好植樹の記念碑もありました。

然し当時の両国政府の文化保護の方針、John Gjestrum氏の生態保護の思いも虚しく、寧ろそうしたプロジェクトが行われてしまったが故に、六枝長角苗族梭戛村の文化と伝統は、僅か十数年で事実上、この世から姿を消してしまうこととなりました。

新しく生まれ変わった梭戛村を眺めながら、この状況をJohn Gjestrum氏はいったいどう思っているのか一度聞いてみたい、との思いに駆られました。

何れにしても、文化や風習を築くには長い年月が必要ですが、それを崩すには非常に短い年数で事足りるということを、つくづく実感することが出来た少数民族村の訪問でした。


【長角の結い方】

折角に山奥の村まで来たので、長角の結い方の実演を見せて頂くことにしました。

1.髪結い前 2.角つけ 3.付け髪準備 4.付け髪巻付(1)
ご本人も非常に長い髪をされています。 骨格となる角を、地毛を使って後頭部に結い付けます。 長角部分になる長い付け髪を手を使って整えます。 付け髪を角に絡めるようにして巻き付けます。
5.付け髪巻付(2) 6.型完成 7.白襷掛け(1) 8.白襷掛け(2)
巻き付けた付け髪を長角風に整えます これで長角の形が完成です。 白い襷のような紐を使って長角を縛っていきます。 長角の形を維持出来るよう、襷を前後左右に巻き付けます。
9.完成!


基本的には長角が大きいほど美人だとされるのが伝統だそうで、未婚の女性は大きめ、既婚の女性は小さめに結うとのこと。
モデルとなって頂いた苗族の女性は20歳と言っていましたので、日本式では19歳なのだろうと思います。

付け髪は、昔は実際の髪の毛を集めて作っていたそうですが、現在は黒の毛糸編みのような材質で出来ていました。
尚、実演は有料で、私たちが訪れた際には、髪を結う人と結われる人、其々30元でした。


【苗族について】

「苗族(中国語発音ではMiaoZu)」は、中国から東南アジア一帯に居住する少数民族です。但し、「苗族」は漢民族から見た呼び方であり、中国以外では「モン族」と自称しています。

中国内に居住する苗族の人口は約900万人と、絶対数でいえば決して少数ではありません。900万人のうち約半数は貴州省に住んでいます。
苗族は言語的・宗教的観点から元々は一つの民族であったと推計されていますが、現状は非常に細かく部族単位に分かれています。

私が貴州省を訪れた際、現地ガイドの方に「どうしてこれだけ服装なども異なるのに、苗族という括りが出来るのか」と質問したところ、「漢民族が黄帝という共通の先祖を有しているのと同様、苗族は蚩尤を共通の先祖とする民族」との説明がありました。然しこれは学問的には誤りであるようです。


(2013年6月)