大仏寺・洋人街


【瀘州】

瀘州は重慶市中心部から約170km、四川省に入ってすぐの場所にあります。
筆者は車をチャーターしましたが、重慶からは長距離バスも多数出ていますので、公共交通機関で行くことも出来ます。

現在は四川省に属していますが、古代史的には蜀ではなく巴に属しており、どちらかと言えば重慶文化圏です。

市中心部(右上写真)は長江と沱江の交差する場所にあったことから非常に古くより都市として発展し、漢代以降もほぼ一貫して瀘州という名称で都市が設置されていました。

明代からは四川行省に属するようになり、1983年より現在の行政区である瀘州市となっています。

然しこの街を一躍有名にしているのは、矢張り白酒の名産地としてです。
「瀘州」と言えば恐らく大半の中国人は白酒を思い浮かべるのではないかと思います。

街中にも大きく「瀘州老窖 国窖1573」の宣伝が掲げられていました。


【瀘州老窖旅遊区】

瀘州には数多くの酒蔵がありますが、その中でも最大且つ歴史を有する場所が観光地として対外開放されています。

高速道路と市中心部を結ぶ国窖大橋の袂にあり、橋を降りるとすぐに非常に強い酒粕の発酵臭が漂ってきます。

橋へ上り下りする道の間に下へと向かう道を進むと右手に瀘州老窖旅遊区の入口があり、正面には「中国第一窖」という石碑が建っています(尚、右写真に写っている民族衣装の方は、偶々居合わせた少数民族の普通の観光客です)。

「窖」という字は日本語では殆ど使用しませんが、中国語では「jiao(ジャオ)」と発音し、貯蔵用穴倉を意味します。

観光区入口右手に観光センター(左写真)があり、こちらで入場券を購入します。
(10元、2015年現在)

観光区の入口は右上の石碑の横で、観光センター側は出口ですが、それほど広い観光地では無いのでどちらから入っても大差はありません。

観光地の一番奥にあるのがここのメイン展示である白酒を造っている酒蔵「瀘州老窖」です。

この酒蔵は明万歴年間(1573年)に中国で最初に作られた「舒聚源(温永盛)」という名前の酒坊を発祥とし、保存状態も良く、現在まで実際に製造利用され続けてきた酒蔵であることから、「中国第一窖」「古法伝承」「活文物」「濃香第一窖」などと呼ばれています。

ここ温永盛で作られた「300年大曲酒」という白酒は、1915年のサンフランシスコ万博に出展され金賞を受賞したとのことで、当時のメダルが博物館エリアに展示されていました(左写真)。

内部は酒蔵上部に見学用の廻廊があり、ガラス越しに酒造りの様子を見学することが出来ますが、その大きさに先ずは圧倒されます。

ほぼ体育館だと言ってよい規模の大酒蔵の中で、多数の高粱を蒸して発酵させる作業が行われていました(右写真はクリックすると拡大します)。


上述の大型酒蔵の隣にも別の酒蔵が隣接していますが(左写真)、特に観光用に開放はしていない様子でした。

酒蔵の廻廊壁面には瀘州白酒が中央政府に如何に評価されてきたかについての説明プレートが展示されていましたので、そのうち幾つかの概要をご紹介します。

<総理関懐 瀘州老窖大発展>

1954年5月、周恩来総理が貴州茅台と瀘州老窖を宴会用酒に指定、特に瀘州老窖大曲酒を接待に好んで使用した。

また当時、周恩来総理は「重慶談判(筆者注:戦時中の国民党と共産党の重慶における重要会談)時、毛沢東首席と私は瀘州老窖を用いて各界の代表者を招いて会談を行った」と述べた。

1974年、病に倒れた周恩来総理は病床から「瀘州酒工場専用のガスラインは認可したか?早く認可し、生産に影響を与えないように」と指示を出したことで正常な生産が維持された。

<偉人論酒 老窖濃香甲天下>

1952年、瀘州老窖は第一回全国評酒会において中国名酒の称号を得て「濃香鼻祖、酒中泰斗」「中国濃香型白酒的典型代表」の栄誉をうけた。

毛沢東主席は元来飲酒は嗜まなかったが、重慶滞在中に瀘州老窖を知ってからは、国内外の友人や各国元首の歓待には瀘州老窖を用いるようになった。

<国窖1573 新世紀独領風騒>

1994年に瀘州老窖有限公司が、2000年に瀘州老窖集団が設立される。
1999年9月9日、特別に醸造された1999mlの国窖1573が製造される。


酒蔵とチケット売場の間には瀘州老窖博物館があり、酒造りの様子のミニチュアや古道具などが展示されています。

博物館にあった説明によれば、ここ温永盛は前述の通り明万歴年間より始まった400年以上の歴史があり、酒穴蔵数も154と最大規模を誇りますが、瀘州には他にも多数の酒蔵が存在し、合計で16の酒坊が現存しているとのこと。

白酒は材料となる高粱等の穀物の品種の他、どのような麹が使われるかによって味が異なってきますが、ここ瀘州で生産されている「大曲」と呼ばれる白酒は曲Mei(中国語は雨冠に毎) と呼ばれる麹を使い「濃香」が特徴となる白酒に仕上がっています。

他の有名銘柄である茅台や五粮液と飲み比べてみると、日本人の味覚的には「濃香」というよりも、寧ろすっきりとして飲み易い印象です。

白酒は庶民用の激安なものから接待用の超高級まで非常に価格帯が幅広いのですが、博物館エリアに展示されていた逸品白酒のうち最高額は1本399,900元(約8百万円)でした(左写真。最初みた際には桁数を読み間違えたかと一瞬思いましたが、紛れも無く399,900元でした)。

飲んでみたいような見たくないようなお値段ですが、筆者が昼食時に飲んでみた1本20元の庶民版(右写真)でも十分に美味しく感じられました。

左に観光エリアの全体図を掲載しておきます。
かなりゆっくりと回っても見学時間は30分〜1時間程度です。

尚、入口横にあった案内板によれば、この場所の他にも郊外にある白酒工業園というエリアが見学可能となっていたのですが、博物館の受付に聞いたところ、現時点(2015年2月)では対外開放していないとのことで、残念ながら通常の観光客は見学出来ませんでした。



【おまけ:張バ(土ヘンに貝)桂圓林】

瀘州中心部にあるもう一か所の国家4A級観光地です。

入園は無料ですが、兎に角広大で、歩いて回るとそれだけで一日終わってしまいそうな場所ですので、電動車(左写真、有料)で移動されることを強くお勧めします。

自然の中で散歩をされる方にはお勧めですが、特段これといっての見所がある訳では無く、景色と草花を楽しむ場所ですので、観光スポットというよりは地元の人にとっての憩いの場所という雰囲気でした。



(2015年3月)